カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

敵対的TOBの利益の可能性とリスク

昨日、伊藤忠がスポーツ用品メーカーのデサント株をTOBすることを発表しました。実質的には敵対的TOBのようですね。このニュースに触発されたので、今回は敵対的TOBについて書こうかと思います。なんか最近こういう投機的な記事を連発しているので、堅実的な方からはお叱りを受けそうですが、また堅実的なことも書くので許してください(笑)。

 

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敵対的TOB、まあ敵対的買収と言うほうが正確かもしれません。敵対的買収とは被買収側(ターゲット)の経営陣の同意を得ずにTOBを仕掛け、買収を試みることを指します。その名の通りです。このようなイベントは時として投資家に利益をもたらします。ただしリスクも大きいですが。このイベントは利益をもたらす可能性もある反面、大きな損失を被る可能性があります。リスクについては後ほど書くので、ぜひ最後まで読んで頂けたらと思います。

 

さて、敵対的TOBで利益を得られるパターンは様々ありますが主なパターンを挙げてみました。

 カナリーが考える利益が得られるパターン

・市場で成立しないと思われていたTOBが成立した場合。

投資家が「TOBは成立しないのではないか」と考えている場合、買い付け価格より低い株価で売られることがあります。しかし、被買収側が有効な防衛策を講ずることが出来なかったり、防衛にもたついた場合、当初の市場の予想に反してTOBが成立する可能性があります。この場合、投資家や投機家は利益をえられるかもしれません。

 

敵対的買収がフレンドリー買収になった場合。 

敵対的TOBではTOBを仕掛けたあとに被買収側の経営陣と交渉することもあるでしょう。市場がTOB成立に対して疑心暗鬼になっている中で、被買収側の経営陣を納得させることが出来た場合、投資家や投機家は利益を得られるでしょう。また被買収側を納得させるために買い付け価格が上がる場合もあります。このような場合は当初の想定より大きい利益を得られます。

 

まあこの他にも色々なパターンがあると思いますが、最も投資家にとっておいしいパターンは次のパターンでしょう。

ホワイトナイトや新たな買い手が現れてTOB合戦に発展した場合。

このパターンのTOBでは買付価格がどんどん吊り上がっていきますから、投資家は短期間で莫大な利益を上げることが出来ます。このパターンの典型的な例はベジがソレキアに仕掛けた敵対的買収です。2017年、佐々木ベジ氏がソレキアに対してTOBを仕掛けました。この敵対的TOBホワイトナイトとして応戦したのがソレキアの大株主であった富士通です。この対決はTOB合戦に発展し、お互いが買い付け価格を引き上げ、最終的に数ヶ月でソレキアの株価は2倍に吊り上がりました。

 

また一昨年から昨年にかけては、イギリスの放送局skyの株を巡って、アメリカのFOXとコムキャストが争いました。元々FOXが10.75ポンドでTOBをしていたところに、コムキャストが12ポンドのTOBで割り込み、最終的にFOXの14ポンドのオファーで決着がつきました。

 

因みに堅実的な投資で知られるバフェットも、実はこのようなイベントにお金を投じ利益を得ています。1988年、RJRナビスコの株主たちはナビスコの経営陣によって1株当たり75ドルの価格で自己テンダー(アメリカではTOBをテンダーオファーと呼ぶ)をオファーされました。このニュースを知ったバフェットはさらに高いオファーが来ると予測し、RJRナビスコを買いました。するとバフェットの予測通りKKRが新たな買い手として現れ、KKRは90ドルでTOBをかけました。その後、ナビスコ株を巡っての経営陣とKKRの戦いはTOB合戦に発展し、最終的にKKRが109ドルでナビスコ株を勝ち取りました。どうも最初の経営陣によるTOBのアナウンスに73ドルで取引されていたこともあったらしいです。バフェットがナビスコ株をいくらで買ったかは知りませんが、もし73ドルで買っていた場合、49%の純利益を得たことになり、更に経営陣のアナウンスからKKRが勝つまで半年ほどしか時間がかからなかったため、年率換算では98%の利益を得たことになります。

 

甘い蜜の裏側にある大きなリスク

 さてここまで読むとTOBに心惹かれる投資家の方もいるかもしれませんが、このイベントはリスキーな側面を持っており、一瞬にして大きな損失を被る可能性があります。

 

まず、TOB投資(投機)に関する一番のリスクは、そもそも敵対的買収が成立する可能性が非常に低いということです。統計的に敵対的買収が成立する確率はたった1割前後と言われており、ほとんどが成立しません。そしてTOBや買収が成立しないと決まったら、一部の例外を除いて即座に株価は下落します。TOB成立への期待を織り込んだ株価が一気にはげ落ちるからです。この恐怖の瞬間を最近の例でみていきましょう。

 

昨年カナダのハスキーエナジーはメグエナジーに対して11.00カナダドル敵対的買収を仕掛けました。TOB公表後メグ株は10.75ドルほどに上昇しました。そこからズルズル株価が落ちていったのは、TOB不成立のリスクを考えてのことでしょう。さてTOB後、ハスキーはメグの経営陣と交渉に入りました。この間、アナリストたちはこのTOBが成立する可能性は高いし、一部ではハスキーはさらに良いオファーを出すかもしれないとも言われていました。しかし先月、ハスキーはメグを買収しないことを決め、TOBを取り下げました。この決定からの翌営業日、メグ株は売り込まれ、TOB成立や更に良い条件を期待してメグ株を8ドルで購入した投資家は一瞬で36%以上の損失を出しました。因みに米国株投資家の方はご存知でしょうが、欧米の証券取引所ではストップ安という概念はありませんから、市場が開いた瞬間、投資家に一刻の猶予もなく損失が降りかかります。

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例えば、普通にコカ・コーラやP&Gといった優良株に長期投資していれば、例えそれらの株で36%の含み損が出ようとも「待つ」という選択も出来ますが、上記のメグ株の場合、何か特別に買い持つ理由がない限り損失を確定する必要がありますから、この辺りは大きなリスクとなります。

 

リスクを打ち消す要素

 このように敵対的TOBにお金を投じることには大きなリスクをはらんでいます。ですから、投資家や投機家は慎重に機会を選ばなければなりません。カナリーとしてはこのようなイベントでは何かリスクを打ち消すような要素があれば魅力的な投機になると考えています。例えばバフェットが参加したナビスコTOB。バフェットがこのTOBにお金を投じたのは、新たな買い手が来ると考えたのが主な理由ですが、最初のTOBナビスコの経営陣による自己テンダーだった点も理由の一つです。バフェットは経営陣による自己テンダーであるならば、TOB自体が流れる可能性は極めて低いと考え、例え新たな買い手が現れなくても、結局75ドルでテンダーされると考えお金を投じました。これがリスクを打ち消す要素です。このように何かリスクを打ち消す要素がある場合、TOBへの投機は魅力的になると思います。

 

他にリスクを打ち消す要素として挙げられるのは、「経営陣が積極的に会社を売りに出そうとしている場合」でしょうか。この場合、敵対的TOBを仕掛けられ、それが破談に終わったとしても、経営陣が次の新たなディールを持ってきてくれる可能性がありますから、魅力的な投機になるかもしれません。因みに「経営陣が積極的に会社を売りに出そうとしている場合」というのは日本では考えられないかもしれませんし、「それを知っていたらインサイダーじゃん」と思うかもしれませんが、アメリカの場合、会社を他社やファンドへ売りに出す方針を前々から投資家に公表しており、誰でも知り得ることが出来るケースがありますから、決してインサイダーだけに出回っている話ではない場合があります。

 

ちょっと長くなりました。まあ今回のデサント伊藤忠TOBがどうなるか私は知ったこっちゃありませんが、興味深いイベントであることは間違いありませんから、注目していきたいと思います。

 

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