カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

ブリストルマイヤーズがセルジーンを買収。買収で使われるCVRについても解説

年の初めからいきなりビックディールが飛び出しましたね!製薬会社大手のブリストルマイヤーズが同じく製薬会社のセルジーンを買収する予定です。今回はこの買収について詳しく見ていきましょう。

 

 

  • BMYの買収の狙い

まあ恐らく単純にセルジーンが持つがん治療薬が欲しいのでしょう(笑)。セルジーンは多発性骨髄腫という病気の薬で大きなシェアを持っていますから、この辺りが魅力的に感じたのかもしれません。

 

アメリカの大手製薬会社の買収案件では成長性やシナジー効果を狙ったものではなく、税金を有利にする目的で行われることも多かったのですが、今回はビジネスをより有利にする目的で買収を行うようです。

 

  • 過去最大級の融資

今回の買収ではモルガン・スタンレー三菱UFJが330億ドルのブリッジローンをBMYに貸し付けることが発表されています。この規模はブリッジローンの類の中では過去最大のローンだそうです。

 

ブリッジローンはあくまでセルジーンの株主に払う対価のために使われるもので、短期融資です。買収成立後は社債や長期融資への借り換えをすることになるでしょう。ただもしかしたら、買収後にセルジーンが所有する現金等も使ってブリッジローンを返済するかもしれません。そうすると、買収後の企業体の借り入れ負担は少し減るかもしれません。恐らくこの点については記述があるはずなので、分かり次第追記したいと思います。

  • セルジーン株主に対する対価・条件

セルジーン株主に対する買収条件はブリストルマイヤーズ1.0株プラス50ドルの現金となっています。これに加えセルジーン株主はさらにCVRを受け取ることができます。ですがCVRというものに馴染みがある日本の投資家は多くないと思いますので、このCVRについて説明していきたいと思います。

 

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  • CVRとは

CVRとはContingent Value Right(コンティンジェント・バリューライト)の略称です。このCVRとは簡単に言えば、買収やリストラクチャリングの時に用いられるオプションで、買収時に用いられる場合は、買収側の企業が被買収側の株主に対して発行します。オプションの内容としては「○○が起こったら、被買収側の株主は△△を貰える」というものです。つまり、あらかじめ決められた事象が買収後に発生したり、達成された場合にオプション保有者、つまり被買収側の株主は報酬を受け取れるというものです。

 

さて今回のセルジーン買収におけるCVRの条件は

 

・ozanimod (2020年12月31日まで)

・liso-cel (2020年12月31日まで)

・bb2121 (2021年3月31日まで)

 

という薬全てが期限内にFDAによって承認された場合、セルジーン株主は9ドルを受け取れる。

 

今回のセルジーン買収では上記のような条件になっていますが、CVRの条件は買収案件によってバラエティに富んでいます。また今回の報酬は現金ですが買収側の株式というケースもあります。例えば、あまり有名な企業の買収案件ではありませんが、パン・アメリカンシルバーという企業によるタホエ・リソースの買収案件では、買収側であるパン・アメリカンの株式がCVRの報酬となっています。この買収でのCVRの条件は以下の通りです。

 

政治的な理由で操業停止しているタホエ・リソース所有のエスコバル鉱山が操業を再開した場合、パン・アメリカン株0.0497を付与する。CVRは10年間有効。

 

このような感じでCVRの条件や報酬は買収案件によって様々です。因みにこの買収案件は現在進行中で、もし買収がきちんと成立した場合、今から仕掛けたアービトラージャーは3-5%のプレミアムを支払ってこのオプションを手にすることが出来る計算となっています。

 

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  • セルジーンのCVRの価値について考える

では、このCVR自体にどこまで価値があるのでしょうか。カナリーなりに分析したいと思います。最終的にはCVRのみの期待収益率を算出して価値を考えていますが、とりあえず順を追って計算していきます。一般的なオプションと異なりボラティリティとかは全く関係がないので、数学的に複雑ではないと思います。

 

まずこのCVRは条件が揃えば9ドル貰えます。もし今からセルジーンを87ドルで買い、買収が無事成立し、さらにオプションの条件が揃った場合、このCVRの単純な利益率

 

報酬9ドル ÷ 株価87ドル = 10.3%

 

となります。

 

ここから年率を計算します。なぜか。単純に理由を言えば、9ドル貰えるまでの期間が短ければ短いほどベターで、長くなればなるほど良くないからです。さて、もし仮にbb2121が2021年の3月に承認された場合、この9ドルを受け取るのに2年と2か月かかります。これがオプションを受け取れるまでの考えられる最長期間です。もしこの9ドルが最長期間である2021年3月末の受け取りの場合、年率は

 

上記の式 で解いた10.3% を使って、

 

10.3% × 12 (1年の月数) ÷ 26 (2021/3までのおよその月数) = 年率4.75%

 

となります。もちろん、3つの薬の承認が早ければ早いほど年率は上がっていきますが、よっぽど製薬の分野に精通していて、早く承認されると確信している投資家以外は、保守的に見積り、期間を長めに考えるべきだと思います。

 

そしてここからはカナリーの勝手な意見ですが、年率とは別に期待収益率を求めるべきだと思います。というのも、上の年率計算ではCVRの報酬9ドルがあたかも確実に貰えるかのように計算していますが、条件が揃わず9ドルがもらえない可能性もあるからです。ですから、確率を考慮した期待収益率を出してCVRを評価すべきです。この期待収益率の算出にはいろいろ意見があるかもしれませんが、カナリーは単純に、上の式で算出した年率を、条件が揃う確率で乗じて出せばよいと考えています。つまり、

 

年率4.75% × CVRの条件が揃う確率 = 期待収益率

 

さて、3つの製薬が承認される確率をカナリーは知りません(笑)。自分で考えてください(笑)。まあ、乱暴ですが、承認される確率とされない確率が半々と考えると、

 

年率4.75% × 50% = 2.375%

 

と、期待収益率が導出されます。もちろん、確率が高いと考えれば期待収益率は高くなりますし、確率が低いと考えれば逆になります。

 

結局このCVRの価値は、3つの薬が承認されるまでの期間と条件が揃う確率に大きく左右されます。ただここを予測するのはとても難しいので保守的に考えることをおすすめします。

 

さて、年率換算の期待収益率は2.375%と数字だけみるとCVRの価値はそれほど高いように感じません。というのも利率で考えればアメリカの10年国債の利率とどっこいどっこいですから。ただこの2.375%というのはあくまでCVRのみにフォーカスを当てた場合です。例えば、セルジーン買収後のブリストルマイヤーズ自体に魅力を感じている方にとっては、例えCVRの期待収益率が2.3%程であっても、おまけで9ドル付いてくるのは嬉しいことかもしれません。また、アービトラージャーにとってもこのCVRはそこそこおいしいと思います。というのも、今仕掛ければ、スプレッド約10%に加えてCVRが付いてくるわけです(買収が無事成立すれば)。無事買収が成立してCVRが付与されれば、そのあとにポジションを持つ必要は特になく、先に受け取ったスプレッドに満足しながら3つの薬が承認されるのを流れ星にでも願って待っていればいいだけの話ですからね。

 

 BMYの主要株主であるヘッジファンドウェリントンスターボードというヘッジファンドのに呼応してセルジーン買収に反対しています。セルジーンは、薬の特許権の関係で、2023年ごろから失速するのでじゃないかと予測されています。このようなことからウェリントンはセルジーン買収に疑問を持っています。彼らヘッジファンドは、買収がビジネス上の目的ではなく、他の製薬会社からの乗っ取りを阻止するものではないかと主張しています。

 

このような点は買収が破談するリスクの一つです。しかし、ウェリントンの株式所有比率は7%ほど、スターボードは1%にも満たないので、株主総会で買収が反対されて破談になることはないという見方が大半を占めています。

 

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